中国労働法ニュースレター (第三回)
2018/05/23 『中倫視界』より転載
【事例紹介】
病気休暇中の海外旅行が社内規定違反にあたるとして行った解雇が認められたケース 。
(1) 前提事実
2013 年 4 月 1 日、北京某社(以下「会社」という)は、丁氏と労働契約を締結し、雇用期間は 2013 年 4 月 1 日から 2016 年 1 月 27 日とした。
2013 年 4 月 19 日、丁氏は電子メールにて会社に 2 週間の病気休暇を申請し、診断書、病歴手帳、医療費領収書等の証明を提出した。これら証明は、丁氏が 2013 年 4 月 18 日に北京の病院で受診したこと、また、頸椎病と診断され、二週間の休養を提案されたことを表していたため、会社は、丁氏の病気休暇の申請を認めた。2013 年 4 月 19 日、丁氏は、ブラジルへ出発し、2013 年 5 月 4 日に帰国した。
会社は、丁氏の帰国後に事情を聞くため面談を設けたが、丁氏は休養した場所についての会話を避け、事前に休暇を取得していたこと、また、社内規定上従業員の病気休暇時の休養場所についての制限を設けていないことを主張した。一方、会社は、丁氏が病気休暇の申請時に提供した情報により、丁氏の病状が非常に重いと判断したため、長距離でのフライトは不可能であるとし、丁氏が提供した情報に偽りがあると判断した。
2013 年 5 月 16 日、会社は、丁氏に労働契約の解除通知を送達した。解除の理由について、会社は、丁氏が二週間の病気休暇申請の当日にブラジル旅行へ向かったことから、休4/4暇をとるため会社に虚偽の情報を提供して会社を騙した悪意が認められ、社内規定に著しく違反する行為にあたるとした。
これに対し、丁氏は、ブラジルに行った目的は休養であり、旅行ではないとし、北京市海淀区労働人事争議仲裁委員会に仲裁を申立て、会社による労働契約解除の決定の取り消し、労働契約の継続履行を請求した。同仲裁委員会は、丁氏の仲裁請求を認める裁決を下した。会社は、この裁決を不服として、法院に提訴した。
(2) 法院の判断
北京市海淀区人民法院の一審判決は、会社に対し、2013 年 5 月 16 日の労働者の労働契約解除の決定を取消し、労働契約の継続履行を命じた。
会社は、一審判決を不服として、北京市第一中級人民法院に控訴した。同法院は二審で、会社の控訴を棄却し、一審判決を維持した。
会社は、二審判決を不服とし、北京市高級人民法院に再審を申立てた。同高級人民法院は、北京市第一中級人民法院の二審判決及び北京市海淀区人民法院の一審判決を取消し、労働契約が 2013 年 5 月 16 日に合法的に解除されたことの確認判決を下した。
※注:
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